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エージェントブログ

2021.07.14

災害を未然に防ぐ【土砂災害警戒区域】の調査義務は?

執筆時点である7月14日において、いまだに懸命の捜索が続く

 

熱海市伊豆山地区で発生した土石流」災害であるが、罹災された方々の状況はもとより、その発生原因の一つと推定される、杜撰であった造成工事についてなどの新事実が次々に明るみになってきている。

 

結論には至っていないが、造成工事をおこなった不動産販売業者(廃業)の責任が重大である可能性は、著しく高いようだ。

 

造成地には古タイヤや木材などが混入されていたと報道されているが、そんなものを混ぜ込めば地耐力など得られるはずもない。

 

起こるべくして発生した災害だともいえる。

 

このような杜撰な工事にたいし、行政も手をこまねいていた訳ではない。

 

数度にわたり、是正命令が出されていたようだ。

 

だが業者は指示に従わず、完了検査も含め上手く取り繕ったことから手順重視である行政も検査済とせざるえなかったのだろう。

 

これを行政の責任であるとするのは、個人的に“酷”であると思っている。

 

決まられた手順、審査基準などをすり抜ければ、行政は「行政手続法」の趣旨から検査済みとせざるえない。

 

もっともうまくごまかそうが、発覚した時にはペナルティが発生するのは当然だが、今回のように販売会社が廃業している場合には、行政として当時の社長にたいし「個人責任」が追及できるかと言えば、これは難しいだろう。

 

考えられるのは罹災した住民が民事として、もと社長や実際に工事をおこなった土木会社を相手取り集団訴訟をおこすことだが、罹災原因と推定される工事内容に関しての写真などの証拠あつめや確認作業、証人尋問など膨大な作業が予想され、長期化が予想される。

 

マスコミ報道によると、もと社長は自宅玄関前に弁護士連絡先を書いた紙を張り出し、インタビューには一切応じていないようだ。

 

訴訟により、もと社長と本件災害にたいする因果関係を立証し、損害賠償請求が認められたとしても、今回罹災の被害額は個人資産で補える範囲をゆうに超えている。

 

あくまでもマスコミ報道をある程度信用すればという前提はあるが、あまりにも腹立たしい結末が予想される。

 

【天網(てんもう)恢恢(かいかい)疎(そ)にして失(うしな)わず】との諺どおり、このもと社長が実際に工事を指示していたとすれば、悪事はおのずから明るみにだされるであろう。

 

だが金銭的賠償としては、先に述べたように個人を丸裸にしても足りぬことから、残るは「国賠」となるのだろうが、現状で得られる情報だけを見れば裁判所が国の責任を認める可能性は著しく低いように見受けられる。

 

現在、数社の出版社から依頼を受け、この問題に関して不動産業者としての見解から様々な視点で記事を執筆している最中ではあるが、この問題で新たに考えなければならないのが、重要事項説明における調査の範囲である。

 

本件宅地を善意の不動産業者が仲介していた場合には、

 

●地すべり等防止法

 

●急傾斜地法

 

●土砂災害防止対策推進法

 

などの地域に該当していればチェックをいれるだろうし、説明もするだろう。

 

これは、重要事項説明の説明箇所として定められているからであり、それぞれの法律の概要も、補足説明をするだろう。

 

だが、当該地が「切土・盛土」のどちらかであるかまでの説明は、完成宅地においては定められておらず、また造成工事中に是正命令が出されていたかどうかまでの調査は、実際にはおこなわれないだろう。

 

下記のように。完成物件の場合には説明省略が認められているからだ。

 

 

 

ただし、今回の災害が人為的な部分に大きな原因の可能性があると考える行政は、今後、調査義務の範囲や説明方法等についての改正をおこなう可能性が高い。

 

それ以前に、人命や個人財産を守る不動産を取り扱う私たち不動産業者の調査・説明責任は重要だ。

 

傾斜宅造地の場合における現地状況調査も含め、近隣地耐力の状況調査や、費用が発生はするが当該地の地盤調査提案など、顧客が安心して購入できる精度の高い調査・提案・説明スキルが必要だろう。

 

結局のところ不動産売買は、本当のプロに任せるのが一番、安全で安心できるということだろう。

 

記事執筆担当_不動産エージェント 奥林洋樹