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エージェントブログ
2021.09.22
9月21日に2021年度の都道府県地価(基準地価)が公表された。
ねんのため解説しておくが、都道府県地価とは国土利用計画法施行令第9条にもとづき都道府県知事が、毎年7月1日時点における標準価格を算定したものだ。
目的は、土地取引規制に際しての価格審査や地方公共団体等による買収価格の算定規準とすることで、適正な地価の形成を図るためとされている。
余談であるが毎年公表される公的価格については、不動産業者でも上手に説明できない人間も多いくらいであるから、一般の方はとかく理解しにくい。
「あれ、公的価格ってつい最近も公表されてなかったっけ?」となる。
「公の公表価格=公的価格」であるから、間違いとまでいえない。
であるが取り扱い機関や目的により、公的価格も種類が分かれるからヤヤコシイ。
これを理解してもらうには、【一物四価】もしくは【一物五価】言われる不動産価格について解説する必要があるだろう。
【一物】とは、不動産ごとの筆数を指す。
不動産の単位は一筆・二筆など「筆」という単位で表現されるが、これは昔「検地帳(旧付属台帳地図を思い浮かべれば良い)」と呼ばれる帳簿に、所在や面積・地目や所有者を筆書き(当然、手書き)で記載していた頃のなごりだ。
そこで【一物=一筆】と理解すれば差し支えない。
つまり【一物四価】と称す場合には、実際に取引される価格(実勢価格)の他にも、下記のような価格(公的価格)が存在していることを意味する。
1.公示価格_毎年1月1日時点の土地を国土交通省が算定する価格。全ての土地価格の指標とされる。
2.相続税評価額_国税庁が公表する、税金算定の根拠となる価格で毎年毎年1月1日時点の価格が7月に公表される。
3.固定資産税評価額_固定資産税を徴収する目的で評価する価格で、3年に一度、前年1月1日を基準として評価される。不動産を所有していると賦課される、固定資産税の計算根拠となる金額だ。ちなみに評価者は市町村である。
4.都道府県地価(基準地価)_今回解説している価格。
つまり実勢価格に上記の1~3.を足したものが【一物四価】
4.まで足すと【一物五価】となる。
ややこしい……と言えば、ややこしいが、相互補完関係であることに間違いがない。
私たち不動産業者が査定をする場合、これら公的価格も参考にしながら実勢価格を算出している。
実際のところ、都道府県地価(基準地価)は「公示価格」で評価しきれていない基準値価格を、都道府県知事が補う目的で算定されている。
公示価格の算定は国土交通省が全国で26,000の標準地点を定めて評価をおこなっているが、日本全国で考えるとあまりにも少なすぎる。
都道府県知事としては、そのような広範囲における基準地価で金額を勘案すれば、一つの標準地点の周りの土地価格が一律で同じ価格となってしまう。
そこで補完を目的として独自に基準地を定め、適正な算定できるようにしている。
最終的な基準値数は年度ごとに変動するが、前年の2020年7月1日公表では全国で21,519地点とされてる。
公示価格の標準地と合計すれば、全国約47,000強の基準地価格の地点価格が算出されていることになる(実際はこれでも少ないと思うのだが……)
私が活動する北海道内の価格変動傾向については、北海道新聞が紙面を割いて分析しているので割愛するが「二極化傾向」が著しい。
なんせ住宅地の地価上昇率において、全国Top10のうち8地点が道内である。
値上がりを続ける札幌市を中心に価格が少しでも安い近隣需要が著しく、日本ハムの球場が建設中の北広島は、地元民も注目するエリアで需要も高く上昇率も全国2位につけている。
同じ自治体の中に複数の基準地点があるケースは多いが、調査では別荘が多い地区にある基準地点を「別荘地」として抽出しており、世界的なリゾートブランドとなった北海道倶知安町(上昇率17・4%)など、全国的にも利便性が高く特徴づけが明確な別荘地は大幅に上昇している。
傾向としてのリゾートテレワーク需要がコロナ禍で喚起され、観光需要が落ち込む地元を支えている構図であろう。
国交省による分析でも、別荘地では国内外からの旺盛な投資の継続に加え、軽井沢町などでコロナ禍における都市部からの移住が拡大していると解説していた。
全体として商業地の価格は下落しているが、必ずしもそうではない地域も存在している。
いわゆる訪日や観光、飲食を基調としている商業地はにきなみ値を下げたが、郊外型オフィス需要などは上昇している地域も多く(札幌も同様)ここでも二極化傾向が見受けられた。
これらもコロナ禍以降で具現化された、二極化傾向の特徴である。
記事執筆担当_不動産エージェント 奥林洋樹