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エージェントブログ

2022.10.31

【軽妙なボヤで賃貸契約解除】法的に有効か?

エージェント兼、不動産コンサルタントとして活動をしていると様々な相談が寄せられる。

 

私自身、広告活動を熱心にしているとはいえないので、知人経由や各社に寄稿した記事を読んで依頼してくる方が多い。

 

つい先日、クロスを多少、焦がした程度の軽妙なボヤを発生させたことにより賃借人に「善管注意義務」があったとして、管理会社から一方的に契約解除を迫られ「そのような対応は法的に有効なのか?」との相談が寄せられた。

ちなみに善管注意義務とは、正式には「善良なる注意者の管理義務(民法400条)」のことであり、賃貸借においては「善良な管理者の注意をもって賃貸目的物を保管すること」と理解すればよい。

 

ちなみに善良なる管理者とは「当人の社会的、経済的な地位に応じて求められる程度の注意義務」で理解すればよく、一般的な「注意」よりも、もう少し気を使って注意しなさいという程の意味である。

 

さて話を戻すが、賃借人は賃料を支払うことによりその部屋に居住するのだが、占有権と同時に共用部の使用について善管注意義務が求められる。

 

この目的に反した行動を行った場合、その程度により「善管注意義務違反」に該当するのだが、相談が寄せられたケースでは火災報知器が反応したものの延焼することなく直ちに消し止められている。

 

クロスを一部焦がしたのは事実であるが、それにたいしての原状回復は火災保険で拠出されることになり、すでに手配済みとのこと。

 

では、このケースで一方的な契約解除が有効とされるかであるが、この程度で契約解除を求めること自体、違法性が高いと考えられる。

 

違約等により賃貸借契約の解除が有効とされるためには「信頼関係崩壊の法理」が適用される。

確かにボヤを発生させた不注意は善管注意義務に抵触するが、それにより直ちに契約当事者間の信頼関係が失われるほどのものではない。

 

程度によるのだ。

 

東京地裁_平成26年10月の判決においても

 

「賃借人がその責に帰すべき失火によって賃借にかかる建物に火災を発生させ,これを焼損することは賃貸人に対する賃貸物保管義務の重大な違反行為にほかならない。したがって,過失の態様および焼損の程度が極めて軽微である等特段の事情のない限り,その責に帰すべき事由により火災を発生させたこと自体によって賃貸借契約の基礎をなす賃貸人と賃借人との間の信頼関係に破綻を生じさせるにいたるものというべきである」

 

とされた。

重大な火災は信頼関係を崩壊させる理由となるが「延焼の程度が極めて軽妙な場合」など、過失態様・火災の程度により個々に判断されるものであり、今回のボヤ発生後の状況(写真で確認)や鎮火後すぐ近隣等に謝罪に訪れているなどの経過も含め勘案すれば、直ちに契約解除が認められるほどに信頼関係は崩壊しないと考えられる。

 

コンサルでは前記内容に基づく内容署名書を作成し管理会社に送付するようお話し、相手方の対応によっては弁護士を紹介する旨を説明した。

 

幸いなことにそれ以上、大事にはならず管理会社・賃貸オーナーとの協議後、契約解除は撤回された。

 

記事執筆担当_不動産エージェント 奥林洋樹