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エージェントブログ
2021.08.27
尊い多くの人命が失われた熱海土石流。
不動産のプロとして、再発防止に関しての提言を地方自治体や顧客に正しく提言するため、災害発生以降、さまざまなメディアに記事を執筆すると同時に、積極的に情報収集をおこなっている。
無論、それだけではない。
所詮、情報は考察に必要とされる材料でしかなく、それよりも大切なのは再発防止や現況の状態を詳しく調査して改善するための具体的な対策だ。
ただし情報量が多ければ、それだけ対応策の精度も上がるので、必要な作業ではある。
今回の熱海土石流の発生により、我々、不動産のプロが考えなければならない様々な問題が提起された。
事件の根本原因とも言われる造成工事を指揮した不動産管理会社の杜撰な工事内容や、そのような業者を生み出した販売優先、利益至上主義の会社を生み出した背景。
そのような業者を、業界全体としてどのように糾弾していくか。
また業者を取り締まるべき地方自治体の権限行使の範囲のほか、不動産業者として、地盤調査を実施しなければ判断できない盛土造成の地耐力にたいし、顧客の生命や財産を守る観点からどこまでを調査し、助言するかといったことについても深く考えなければならない。
人間は忘却の生き物である。
日々、おきる事件や事故により記憶は少しづつ薄れゆくが、不動産のプロである我々は記憶を薄れさせてなならない。
自浄作用を引き上げることにより、業界全体としての社会的な地位の向上につながるからだ。
そのような広範囲のテーマについては都度、コラム等でお伝えしてくが、今回は「全国自治体が戦々恐々する理由」をテーマに論じる。
個人的な意見ではあるが、私は造成工事の検査をおこなう地方自治体をそれなりに信頼していた。
造成工事を手掛けたことがあるかたならお判りになるが、求められる書類や検査はけして杜撰なものではない。
良心的な業者が定められたルールに従い適切な工事をおこなっていれば、「盛土・切土」造成地は何ら心配することはない。
ただし、である。
造成宅地は大丈夫でも、それよりも高台で急斜面が決壊した場合にはどうか?
急斜面の決壊を防止するのは、行政の仕事である。
だが、行政も業務量と人員というジレンマが少なからず発生し、ましてや「公僕」ではあっても、恵まれた公務員である。
ブラック企業と揶揄されるように、人馬のごとく従業者を働かせる民間企業のようには労働させない。
自らが定めたルールが適切に行われているかのチェックが、そのような労働力不足(そう呼んでもよいのか疑問だが)を背景として、業者に一任しているケースが日常化していた事実が発覚した。
それらについては今後において、自分なりにまとめて論じる。
今回は、土石流の経路についてである。
杜撰な工事をおこなった業者の責任が重大であるのち違いはないが、熱海特有の急斜面形状、さらに火山灰などの火山性地盤土質が、降り始めから450mmを超えた長雨により決壊したのが根本的な原因である可能性が高い。
この考えを裏付けるのが、熱海崩落現場を国土地理院地図のデータを利用して3D化したビジュアル地図であるが、大きくエグれた陥没地点が土石流の起点になっている。
この場所は、盛土造成地ではない。
専門家は地形学的に、「土石流は起こるべくしておきた」としている。
決壊による土砂が加速度を増し、矢印付近の造成地に至る。
ここで、造成工事が地耐力を有していれば、ある程度の被害を食い止めることも可能だったかも知れぬが、そうではなかった。
最終的に高きから低きへ、被害を増しながら海まで至る。
このように、入手できる情報を様々に分析していけば、まがりなりにも対策が見えてくる。
国は、今回の災害を重く見て盛土造成の一斉点検を指示しているが、地方自治体と足並みが揃っていない。
尊い人命と個人財産を守る意味でも、早急に対応しなければならぬ事案であるのだが……
記事執筆担当_不動産エージェント 奥林洋樹