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エージェントブログ
2023.01.11
不動産コンサルを主業としていると、およそ様々な相談が寄せられる。
最近、注目度の高い所有者不明問題や登記義務化にたいしての登記申請時期や相続、相隣関係トラブルに関しての見解など様々だ。
相談してくる方は一般の方も多いが、専門性が著しく高いとの評価がそれなりにあるからなのか、セミプロともいえる不動産投資家からの相談も多い。
そのようなクライアントの一人である関西方面の投資家から、タイトルとした容積率違反建築物の投資について見解を尋ねられた。
ご存じかと思うが、建物を建築する際には建ぺい率や容積率、外壁後退距離に高さ制限などを遵守して建築する必要がある。
この際によくあるのが第一種低層住居専用地域など建ぺい率40%に地域で、ほぼ限界まで建物を建築しているのに拘わらず、完了検査後、車庫などを建てるケースである。
車庫は土地に定着した建築物であるから、当然に建築基準法違反である。
であるから違反建築物として行政は、工事差止めや解体命令が発せられるのだが、実際には特殊な例を除いてはお目溢(めこぼ)ししているケースが多い。
例外は「隣の車庫、建築基準法に違反しているんじゃございませんこと」なんてリークされた場合ぐらいであろう。
厳密には違法だが「車は大切だからお互い様だね」なんて感じで、大概は大目にみられるものである。
であるが増築により建ぺい率や容積率に違反している場合は「確信犯」であり罪は重い。
建ぺい率や容積率の違反が発生するのは、増築などによるものである。
原則として10㎡以上の増築工事は建築確認申請が必要であるが、申請しても建ぺい率などを超過している工事にたいし許可がおりる道理はない。
このような場合、申請をせず建築されている。
確信犯であるから、工事をしていることが発覚すれば当然に中止命令が発せられるのだが、行政は多忙であるから細かくパトロールを行っている訳でもなく、近隣からのリークなどがない限り速やかに工事を終了してしまう。
既成事実ができても行政処分を行えるのだが、よほど悪質なケースを除き解体命令が発せられたケースを耳にしない。
いわゆる「やったもん勝ち」といったケースが多いのも事実だ。
であるが、このような違法建築物はいつ行政処分が下されるか分からない点や、中古住宅として販売する場合、購入者が住宅ローンを受けられないというデメリットがある。
金融機関は原則として「違法建築物には融資しません」というスタンスだからだ。
自らがまいた「種」であるから自業自得とも言えるが、タイトルとした「建ぺい率や容積率に違反している建物は絶対に購入しないほうが良いの?」という相談は、とある投資家からのものである。
要するに、違法建築物であることから相場よりかなり割安で購入を持ちかけられたのだが、購入した場合、どのようなリスクがあるのかということにたいする質問である。
この場合、投資家は現金で購入を予定しているので融資に関しては問題とならない。
懸念されるのは違法建築物として行政処分が下されることであるが、築年数30年弱の建物である。
行政も状況を把握していながら処分を留保してきたのだから、いきなり処分することは難しいだろう(もちろん可能ではある)
であるから、残るは共同担保として提供する場合「担保価値が認められない」と判断される点と、当然のことながら建て替え時には現行の大きさと同じものは建築できないという点である。
違法建築物でも所有権移転はできる。
であるから売買自体に問題はない。
そのようなリスクがあるので、売主も格安で購入の打診をしてきたのだろう。
投資家の目的は賃貸転用であるから、これまた違法建築物であることは問題とならない。
賃貸契約の重要事項説明に「本物件は建ぺい率を超過しており、行政処分により建物の解体命令が下される可能性があります」と、正直に告知して了解を取り付けておけばよいだろう。
リスクは相応にあるが、購入の目的が異なれば見解も変わるのだ。
記事執筆担当_不動産エージェント 奥林洋樹