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エージェントブログ
2022.12.10
不動産のコンサルティングとして活動していると、一歩間違えると弁護士法違反に問われる相談が寄せられることがある。
立ち退き交渉なんてのもその一つだ。
なかでもよくあるのが賃貸物件の老朽化を理由とした物件明渡請求だ。
これには相続が絡んでいるケースも多い。
つまり老朽化した賃貸アパートなどを相続した場合における、相続人からの相談だ。
ご存じの方も多いと思うが、明け渡しには正当事由が必要である。
よくあるのが建物老朽化を事由とした立ち退きである。
たとえば地震が発生した場合、新耐震基準(昭和56年4月以降の建築確認申請)に適合しておらず、かつ耐震性を引き上げるための補強工事を実施していない建築物は、倒壊や崩壊の危険性がある。
賃借人が入居している状態で補強工事を行うこともできなくもないが、それよりいっそ建て替えした方が良いのではと考えた場合、賃借人に立ち退いてもらう必要がある。
であるが賃借人の居住権は強い。
正当事由については下記の借地借家法第28条の規定を理解するのが良いだろう。
「建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない」
これにより正当事由は賃貸人、賃借人それぞれの事情を斟酌し、比較考量して判断される。
天災により賃借人に危険が及ぶ可能性の高い老朽建築物は、その建て替えを正当事由とする場合が多い。
だが、実際にはこの事由が「賃借人の居住継続の必要性を上回る」と判断されることは極めて稀なのだ。
そのような場合には正当事由を補完する手段として「立ち退き料」を提示する。
つまりお金をあげるから出ていってくださいということだ。
この立ち退き交渉ができるのは、本来、弁護士だけである。
わたしたち不動産エージェントが、代理人として立ち退き交渉をおこなえば弁護士法違反となる。
であるが、あくまでも賃借人の意思を伝えるだけのメッセンジャーボーイとして手伝う分には、限りなくグレーではあるが抵触しない。
もっとも私が立ち退き交渉に関しての相談を受け、実際に活動依頼された場合には予め弁護士と打合わせをして、活動範囲を取り決めて動くようにしている。
立ち退き交渉もなかなかに難しいのだ。
記事執筆担当_不動産エージェント 奥林洋樹