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エージェントブログ
2022.05.25
一般的に「不動産業界」と称される業界は、実は専門ごと多岐に分かれる。
代表的なのは土地・建物の売買を手がける仲介業者であるが、仲介においても「買い取り専門」のように、物件を仕入れて付加価値をつけ売却する業者もあれば任売専門・事故物件専門など他社と差別化するためにその優位性を喧伝する業者もある。
また建築と不動産は別物であるが、建築会社が宅地建物取引業免許を取得している場合も多いことから、広義に不動産業者とされる。
それ以外にも海外不動産専門や投資専門、はては宅地建物取引業免許の不要な管理会社まで一括りに不動産業界だと言われるのだから、籍を置く私ですら「どこまで不動産業界なの?」と、思うほどである。
関連性があれば、すべて不動産業界というのが一般的な認識であろうか。
私ごとであるが31年の不動産キャリアにおいて、約10年ハウスメーカーに在籍していた。
主に営業部門であったが、人材不足から工事部の統括として職方や発注管理もおこなってきたので、特段の建築関連資格を有してはいなくても相応の知識は有している。
だからというわけではないが、私が設計して顧客に提案した住宅が、全国各地で100件以上、住宅の要に供されている。
無論、建築基準法に適合させるため建築士による修正は行われているのだが、建物剛性の確保や採光基準などの各種法的な規制は概ね把握して図面を作成しているのだから、ほとんど手直し不要で建築されている。
それでは間取りも含めた建築デザインによほど通じているのかと言えばそうではない。
パターンを覚え、それを応用しているのだ。
北入の建坪30坪、4LDKで家族構成が4人、ご主人は書斎を要望しており奥様は家事スペースが希望、さらに食品庫も欲しいなどと聞けば、即座に字型を入れたゾーニングをスケッチできる。
2階の荷重を受ける1階部分の壁配置や、ツーバイフォー・在来など工法の違いにより耐震性確保のために必要な基準や、和風・和洋折衷・北欧・南欧・ヨーロピアンなど各種デザイン性の違いまで把握し、かつ工事監理統括をしていたおかげて身についた、部材毎の価格差や劣化、職方の技術レベルまで指摘できるのであるから、それなりではあるのだろう。
だからという訳ではないのだが、日本人のライフスタイルに「家族の集まるリビングは不要」だと思っている。
リビングの存在しない間取りなど感覚的にあり得ないのかも知れぬが、家族の集まる広々リビングは、実際にはほぼ活用されていない。
お父さんは住宅ローンを支払うため毎日、残業。奥様も家計の足しにとパートへ通勤。
子どもたちは塾や習い事で忙しく、自宅では部屋にこもってスマホに夢中というのが、極端かも知れぬが最近の傾向である。
一体、家族の集まるリビングはいつ活用されるのだろうか?
であれば最も充実させるべきは、ダイニングとキッチンである。
ハウスメーカーの間取りパターンでは、南向きで日当たりの良い場所にリビングを持ってくるが、家族の集まらない、もしくは日中集まる可能性の低いリビングに日当たりは不要だという考え方ができる。
「飯は必ず食う」のであるから、少なからず家族が顔を合わせる機会が多いのはダイニングである。
であればダイニングとそこに連なるキッチンこそ、日当たりや窓からの景色の良い場所に持ってくるのが、快適な暮らしと家族のコミュニケーションに必要ではないだろうか?
私だけではなく、建築士も含めほとんどの有識者はこの理屈に気がついている。
であるがハウスメーカーを筆頭に、このような間取りの基本パターンは提案しない。
「売れない」からだ。
家族の集まる広々リビングが幻想的であれ定着してしまい、それに「異」をとなえる間取りは忌諱され、営業マンも他社から遅れをとるので、そのような設計プランを望まない。
結局は、世間受けする差し障りのない家が増えることになる。
記事執筆担当_不動産エージェント 奥林洋樹