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エージェントブログ
2021.12.11
コラムを執筆していることからの『ネタ』探しの意味合いもあるが、不動産に関してはプロフェッサーでありたいという渇望から様々な情報を収集し、知識の糧とする。
情報の収集は書籍による場合も多いが、ネットの情報も参考になる。
最近、非常に興味深いニュースを見つけた。
ファーストロジックが運営する「楽待」のニュースで、下記から参照いただける。
4700万の「一括返済」、フラット35で投資物件を買った女性の後悔
ネタばれになるので記事の詳細については触れないが、タイトルだけを見れば「支払い遅延」により期限の利益を喪失した、一括弁済請求かと思ったのだが読んでみると違った。
投資用物件を不動産業者(正確には仲介者)の言いなりのまま住宅ローンで借入し、不正利用として一括弁済請求されたのだ。
考えて見ればフラット35は、投資用ローンは取り扱っていない。
そこで住民票だけを移して書類上で入居の体裁を整え、融資を受けている。
金融機関は住宅ローンを貸し付けても入居確認を住民票上でおこなうので、体裁場ではあるが金銭消費貸借契約前に実態を伴わないのを承知で先行して購入物件(新住所)に住民票を移動してからおこなう(所有権移転の登記手続きもこの方が容易である)
で、あるがこれは「居住用物件の購入のため」におこなう手続きであって、「投資用物件」を一般的な住宅ローンを利用して購入すれば、立派な詐欺行為である。
記事中でもフラットから「転居に関しての経緯説明書」が届き、融資の利用目的や居住実態に疑義が生じているとして経緯の説明を求められている。
上記の書類は、決裁がおこなわれて所有権が移転されても、転勤などの都合上で転居が遅延すれば届くこともあるが、後ろめたい理由がなければその旨を記載すれば金融機関も承諾する。
ところが、後ろめたい理由(記事中では当人は知らなかったとなっている)があるので放置していたところ、「全額繰上償還請求の予告」が届いた。
書面には「融資住宅の取得目的や融資住宅からのご転居理由の正当性についてお客様から十分な回答が得られなかった」とあり、「住宅ローン残債務全額について一括で請求を行わざるを得ません」と記載されていたとのこと。
記事中の女性は、仲介者に何度も「一括弁済請求」について相談していたらしいのだが、仲介者は「全員に一括返済請求をして自己破産になってしまったら、金融機関側が困る。だから実際には一括返済請求をされることは無いから大丈夫だよ」と説明している。
その上で、フラットには「妹と東京で暮らすために購入したが、妹が実家に戻り、1人で住むには広すぎるので、購入した物件で住むことを断念した」と虚偽の返答をするようにレクチャーしている。
ま、あまりにも意図的ではあるが似たような話はそこらに転がっている。
そもそも居住に供している住宅を、転勤などにより空き家になるから賃貸として運用することにも、金融機関の承認が必要である(金融機関は、住宅ローンが予定通り返済されている限り居住実態を確認することは希であるから、承認を得なくても発覚することは多くないのだが……配達記録郵便などが送達されたときに発覚することがあるんだねコレが)
このような信義則違反が確認されれば、期限の利益(分割して元金を返済する約束)の根本となる相互の信頼関係が失われるのだから、一括弁済を請求されても致し方がない。
コロナ禍による所得減少などで住宅ローンの支払いに困窮しても、予め誠意をもって金融機関に相談をすればいきなり期限の利益を喪失して一括弁済を求められることはないが、虚偽による信頼関係の破城は話が別である。
記事中の女性は気の毒ではあるが、高額な不動産を購入するのにあまりにも下調べが少なかったと言わざる得ない。
もっとも、高度な知識が必要とされる不動産であるから、一般の方が不利益を受けないように私たち善良な不動産業者が存在するのだが、もろ刃の剣として、知識を悪用すれば素人を「嵌める」のは簡単である。
だからこそのコンプライアンスなのだが……
記事執筆担当_不動産エージェント 奥林洋樹