Facebook Instagram
011-763-8360 受付時間(平日)9:30~18:30 CONTACT

NEWS

エージェントブログ

2022.01.22

【タワーマンションで火災】さてどうやって脱出する?

私の活動する札幌市も、およそ200万人の人口を抱える北海道で一番人口の多い政令指定都市であるから、市内のあちらこちらにタワーマンションが存在している。

 

ちなみにタワーマンションと呼ぶための条件、つまり明確な定義は存在していない。

 

じつはタワーマンション、自社の思い描いている基準、つまり階数やデザイン形状で「う~ん。階数が20階だからタワーでいいよね」なんてノリで企画販売するデベロッパーが名付けているだけだ。

そもそもが建築関連法規に「超高層建築物」の規定が存在していない。

 

そこまで適当であるとさすがに支障があるので、無理やり定義づけすれば建築基準法第20条1項だろう。

 

「高さが60mを超える建築物において安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術基準に適合するものであること」とされる建材や構造計算方式を定める規定であるが、そのあたりが一応の目安となる。

 

ちなみに高さが60mだと、だいたい20階建てに相当する。

 

もっとも階数が20階であっても真四角の団地形状型マンションに「タワー」と名付けるのはさすがに気が引けるだろうから「階数20階建て以上で、ほっそりとした塔形状の外観を特徴とする居住用マンション」と考えれば良いだろう。

 

もっとも明確に定義が存在していないイメージ先行の名称であるから、企画販売するデベロッパーが「階数は17階建だけれどフォルムがタワーっぽいから、○○タワーと名付けよう」としても問題はない。

 

もっとも居住者によっては「タクの住まい、駅近タワーマンションですことよオッホッホ……」なんて派手な衣装で喧伝すれば、何となくハイソなイメージが増すであろうからイメージは大切なのだろう。

 

そのようなブランド志向の購入検討者からすれば「○○タワー」の名称は、大切な選択基準かも知れぬ。

 

閑話休題

 

つい先日「中古タワーマンション」購入希望のお客様の内見で某タワーマンションに同行した。

 

16階部分の部屋で眺望もよく、お客様は眼下に広がる風景をニコニコと見下ろされていたが「万が一、火事になったら一体どこに逃げればいいんでしょうね……」とポッリ。

 

確かに心配になるだろう。

 

火事も心配だが、それは後ほど解説するとして停電時だ。

 

頻繁にあることではないが(あっても困るが)停電でエレベーターが止まってしまった場合、仮に20階の部屋に住んでいるとして、非常階段を利用して降りる分にはよいが上る気にはならぬ。

 

東日本大震災以降のタワーマンションは、そのような有事にそなえて停電時においてもエレベーターを稼働できるよう、非常用電源を備えている(全てではないのでご注意を)マンションが増加したが、実はこの非常用電源はほとんど役に立っていない(正確には役立ったという話を聞かない)

 

そもそも、タワーマンションではなくても31mを超えるマンションには非常用エレベーターの設置が義務づけられている。

 

非常用エレベーターは耐火構造の壁で囲まれ、万が一火災などにより停電した場合でも非常電源で稼働できるようになっているが、これは居住者用ではなく消火活動や救急搬送用を目的としたものだ。

 

非常用電源は軽油などを燃料を利用して発電するエンジン方式であるから、燃料の備蓄が必要だ。

 

管理会社により異なるが、燃料は劣化するし備蓄量に比例して保管場所の問題も生じることから、むやみにため込む訳にはいかない。

 

多くは概ね4時間程度発電できる程度が目安として備蓄される。

 

もっとも非常用エレベーターの分は優先的に備蓄されており、それ以外の居住者用でも非常時にも稼働できるとしているマンションの場合には相応の備蓄しているはずなのだが、東日本大震災の直後において居住者用のエレベーターを「災害時に動かせます」と宣伝していたはずのマンションでも、実際に稼働したケースは皆無だったと聞く。

 

「なんだソレは、意味がないじゃないか!!」と怒りたくもなるが、続きをお読みいただきたい。

 

震災の直後に発生する停電は、復旧にどれだけの時間が必要か分からない。

 

停電の原因により、時間もことなる。

 

2018年に発生した北海道胆振東部地震では、人口約200万人の政令指定都市である札幌市は大規模な停電に見舞われた。

 

速いところでも1日、復旧が遅れたエリアでは3日も停電状態が続いた。

 

さてここで考てみよう。

 

復旧の見込みが立たない状態で、備蓄量4時間程度の燃料を一気に放出するか?

 

答えは「否」である。

 

更なる有事に備え温存しようと考えるだろう。

 

なんせ使い果たしてもライフラインの断絶により、補充の目途も立たない状態である。

 

万が一の救急搬送などに対応するため可能な限り温存するだろう。

 

もっともそのような事態の反省を踏まえ備蓄量24時間型など、燃料のストック場所を確保して対応するタワーマンションも増加しているから、購入を検討する場合には営業マンに「非常用電源の燃料確保はどの程度?」と質問して確認するのが良いだろう(この程度の質問に答えられない営業マンからは、購入してはイケナイ)

 

続いて火災に関してだ。

 

火災に関しての質問はよくある。

 

話題にもなり、記憶の新しいところでは2017年6月14日未明に発生した、ロンドンにある24階建て高層公営住宅「グレンフェル・タワー」での火災事故がある。

 

鎮火後の現場検証による報告では火災発生は4階で、出火すると一気に上層階まで燃え広がり、タワー全体が焼き尽くされた。

 

日本でも盛んに報道されていたので記憶に残っている方も多いだろう。

 

この火災事故で、少なくとも70人以上の尊い犠牲者がでる大惨事になった。

 

だが同様の火災が日本のタワーマンションで起こっても、ここまで被害(延焼)が広がることはないだろう。

 

根拠は内外装の建材の違いによる。

 

とくに高層建築に使用される建材の違いだが「グレンフェル・タワー」は外装が可燃素材で覆われており、建物の外部から燃え広がったと報告されている。

 

日本において高層建築物の外装は耐火構造と定められており、また室内も耐火性の高い不燃材が使用されている。

 

端的に言えば、意図的に燃やそうと思っても燃えない建材だ。

 

また建築基準法や消防法で火災報知器やスクプリンクラー、防火シャターなどの設置も義務づけられており、延焼の可能性が著しく低い。

 

万が一出火しても、専用住戸もしくは最小限の影響で封じ込めてしまう造りである。

 

世界的な基準からみても耐震・耐火性能に求められる基準が高いのが日本の高層建築物で、この点についてはあまり神経質にならくても問題ない。

 

万が一の脱出用としては非常用エレベーターも、緊急避難時には利用できるしタワーマンションにはヘリポートも設置されている。

消防庁による「緊急離着場等設置指導基準」により、高さ31m~100mの場合は緊急離着陸場か緊急救助用スペースを、高さ100m超の場合は緊急離着陸場を設置しなければならないという設置基準が規定されているからだ。

 

タワーマンションの屋上に設置されているヘリポートは、セレブがお忍びで部屋を利用するために設置されている訳ではない。

 

そのように思いこまれていた方は映画の見過ぎである。

 

タワーマンションの購入に限らずだが、大切な財産である不動産を購入する場合には、蘊蓄も含めてこのような説明がスラスラとできる営業マンから購入するのが一番の対策かも知れない(良いところも悪いところも、きちんと説明をしてくれるから)

 

記事執筆担当_不動産エージェント 奥林洋樹