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NEWS

2021.08.21

【それ、違法です】

テレビを好んで見ることはないが、読書のほか娯楽として「映画」はよく見る。

 

最近のことであるが、家賃を滞納した賃借人の荷物を廊下に放り出し、あげく鍵を交換して入れなくしている古い日本映画を見た。

 

娯楽である映画の世界のことだから問題はないが、昔はこのような映画の世界同様の強硬手段を講じる大家が実際にいた。

 

法的には

 

「勝手に室内に侵入し荷物を放り出す」

 

「鍵を勝手に交換する」

 

これらの行為は違法であり、賃借人は賃貸人にたいして損害賠償を請求できる。

 

目安として賃料が3か月滞納されると、賃貸借契約における信頼関係が破壊されたと解され契約解除の要件を満たすが、話あいによる合意解除、もしくは賃借人にたいし配達証明つき内容証明郵便の送達をして解約の意思表示をする必要がある。

 

もっとも契約解除ができたからといって、勝手に侵入したり鍵を交換できるわけではない。

 

それらは別の話である。

 

どうしてもと言う場合には「明け渡し請求」訴訟を提訴するこである。

 

裁判による判決が出ていない状態で賃借人の許可を得ず侵入し、搬出・処分をすると違法な自力救済に該当する。

 

違法な自力救済(民法709条)とは、法の助けによらず、発生している侵害状態を自力で解消する一連の行為であるが、冒頭であげた映画の行為はこれにあたる。

 

 

不動産コンサルを「業」としていると、賃借人所在不明の状態で家賃が滞納され、困り果てた賃貸人が相談してくるケースがある。

 

連来保証人に滞納家賃の請求は当然するが、併せて放置物の撤去も連帯保証人に請求できるかとの相談だが、結論からいえば連帯保証人に権限はない。

 

多少、難しい言い回しになるが賃借人の明け渡し責務は、主たる債務として一身専属的な給付を目的としていると解され、保証人等が代わって実現することはできないとされているからだ。

 

賃貸人が自主管理し、契約書も自ら作成している場合などにおいて約款に

 

【賃借人が行方不明である場合に家賃等を滞納した場合、賃借人の承諾なしに施錠や室内確認を行い、明け渡し手続きおよび当該物件に残置された動産物を処分しても異議申し立てしない】との条項を付している場合を見受けるが、これ自体が無効である。

 

賃借人所在不明の残物撤去は、「明け渡し請求」訴訟を提訴してからしかできない。

 

これらを理解せず居室侵入などの自力救済を行使すると、最悪の場合には住居不法侵入などの刑事罰に該当するので注意が必要である。

 

記事執筆担当_不動産エージェント 奥林洋樹